雨のち晴れ。
「お風呂のお湯、入ったよ」
大澤さんの妻...だろう。
顔を覗かせながら、声をかけてくれた。
ちょうど、握手しているため
手を握っている。
「一樹...妻の前で浮気?」
くすくすと笑いながら、尋ねている。
大澤さんは、おろおろしながら
「そんなん、せんに決まってるやん。
 な?亜花梨」
妻の名前は“亜花梨”というらしい。
「えぇ~でも...ねぇ、伊吹ちゃん」
どうして、名前知ってるの?
「え?何で名前...」
「ごめんね、盗み聞きするつもりは
 なかったんだけど...」
「じゃあ、最初から?」
少し悩んでから、小さくコクンと頷いた。
「そうですか...」
別に、この人達になら知られても
いいって思ってる。
「寒いでしょ?先にお風呂、入って」
「あ...はい」
大澤さん達の優しさに、心が温かくなった。
「こっちよ」
亜花梨さんが、案内してくれた。

「じゃあ、ここで服脱いでここに入れてね。
 で、あたしの服ここに置いておくから
 上がったらこれに着替えてね」
亜花梨さんに、ぴったりの可愛い服が
きちんと畳まれて置いていた。
「ありがとうございます...」
「じゃあ、外に出とくね」
そういい残して、ドアを閉めた。
新居なんだろうか。
とても綺麗な浴槽だ。
透き通ったお湯に、足を入れた。
ポ...チャン...
静かな浴室に、水の音が響く。
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