雨のち晴れ。
人の温もりに触れたかった。
ただ、それだけ。
それだけなのに...
どうして上手くいかないのだろう。
私は、何か間違えたのでしょうか。
私は、欲張りなのでしょうか。
答えてくれる人は、いないのだろうか。
「なぁ、伊吹」
外の方から、大澤さんの声がした。
「なんですか?」
返事をする。
「我慢だけはすんなよ」
優しくしないで。
心が壊れそうなの...
苦しいの、悲しいの、切ないの...
そんな声で言わないで...
「我慢なんてしてないよ」
振り絞って出した声は、
大澤さんに届いただろうか。
小さく、弱い声だった。
泣きそうだったから。

「大丈夫か?泣かんとってよ?
 抱きしめられらんから」
本気で心配しているようだ。
抱きしめる...って。
結婚してるんでしょ?
浮気になっちゃうよ?
「大丈夫っ!!泣かないよ」
大澤さんに言ったつもり。
でも、自分に言い聞かせてるように思う。
もう...
涙は流さない。
1人で生きていかないとダメなんだから。
涙を拭ってくれる人は、いないから。
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