紅梅サドン
ルノーが土産だと持ってきた多数の赤ワインは、どれもこれも相当に美味かった。

明日も仕事だというのに僕はかなりのアルコールおばけになってしまう。

雪子は酒が驚く程弱いと見えて、最初の発泡酒一杯を飲み干すと早くもアルコールおばけと化した。

たった一杯の酒で、雪子の顔色は瞬く間に真っ青に変わり絶望的な状態となってしまった。


「あ、あぎざん、わだじもうねまず。ごのままだと明日、あぎざんの朝ごはんづぐれなぐなりますがらーー。」

雪子は酒の廻った舌でそう言いながら這うように隣の部屋へ消えていく。

「雪子さん、いいよ、明日はゆっくり寝てて、大丈夫だから。」


「そういう訳にはいぎまぜん。

私、あぎざんの役立つ空気になると約束じまじだから。

大丈夫でずゲドーー。」

所々破れている襖からは、それっきり声は聞こえずいつもの雪子の寝息が聞こえた。



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