紅梅サドン
「この中身は私の嫁入り道具と思って下さい。

あ、大丈夫です。お金はありますから。

家事も全て完璧にやれます。

それに秋さんの気に障る様な事は、一切致しません。

最悪、私を空気的なモノと捉えて下さってもいいんです。

どうか側に居させて下さい。それだけですケド。」

彼女は少し早口に話した。

スーツの下。
脇に汗が気味悪く垂れてくる。

「いや、あの、別にそんな、結婚相談所からだとしても、急ぐ事じゃないですし、急にそんな事言われてもちょっと――。」

僕も負けずに早口で応戦した。

彼女は一瞬僕を見つめ、どうにも信じがたい言葉を弾き出した。



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