紅梅サドン
味方になるという感情は、良いとか悪いとかを超えた所に存在する様な気がする。

平凡な僕はきっと、生きている間に人々から尊敬される様な大それた事は決して出来ない人間なのだろう。

僕は英雄にはなれない人間ーー。

そんな事は昔からよく理解している。

だからだろうか。

僕は“味方”という言葉が昔から好きだ。

僕が身近な誰かの味方になれるんだとしたらーー。

赤の他人のために味方になる必要など無いのも、よく分かっているのに。


何故なんだろうーー。


その時、ルノーは子供の様な小さなくしゃみをした。

それは風に揺れる小さな風船がパチンと気持ちよく割れる、爽快な音に似ていた。

上半身裸のままだったルノーは、そばに転がっている白いシャツを手に取る。



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