紅梅サドン
「秋さん、秋さんの好みの女性は?ズバリ言って下さい。」

「え?何でですか。」

「ショートカットがお好き何ですか?だったら切りますケド、どこまでも。」

「そんな事を話してるんではありませんよ。

雪子さんが好みじゃないとか、そういう事では無いです。」

雪子は一瞬にして、何故か顔を赤らめた。

「私、恋愛経験少ないですから。

あまり誉めないで欲しいんですケド。」

そう言った雪子の縫い針みたいに細長いまつげが、嬉しそうにパチパチと震えた。

褒め称えた覚えは全くもって無い。

噛み合わない話相手程、肩の凝る事は無い。

やはり思っていた通り、この美人とこれ以上話すと、出口も無いとんでもなく面倒な迷路に落とし入れられるに違いない。

逃げよう。
面倒な事は僕の性に合わない。

何度でも言おう。
間違いない。
面倒な人間に間違いない。

僕の細胞全てが真っ赤なシグナルと化し、そう叫んでいた。


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