紅梅サドン
「お気持ちは嬉しいんですが、とにかく今日はお互い帰りましょう。

紅梅エターナルさんにまた連絡します。日を改めて、また。」

店の窓から差す光に彼女の横顔が照らされる。

綺麗に出たおでこが凛とした印象を強めた。

「私、住む家ももうありません。

もう今日の朝、相当な無理を言って解約して来ました。

秋さんの家に居させて下さい。」


そう言うと雪子は、もぞもぞとカバンから小さな袋を取り出し、テーブルの上に置いた。

「通帳と印鑑が入ってます。今まで貯めた貯金です。

片田舎の銀行員でしたから、そんなにはありません。

秋さんが預かって下さい。私の心に嘘は無いです。」

僕の前に袋を差し出した雪子の長い指もまた、しなやかに凜と伸びていた。



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