紅梅サドン
僕と雪子は、ルノーの突然の言葉に驚いて黙っていた。


「ケーキ食べ損ねたあ!俺さあ、超楽しみにしてたからさ。

また一緒にレアチーズ作ろうねえ、雪子!。」

そう猫撫で声を出すと、ルノーは次郎が籠もっているトイレのドアの前に静かに座り込んだ。

何も言わずにルノーはただ、トイレの前に座って煙草を吹かし始める。

トイレの中からは、次郎の涙声が微かに聞こえて来る。

ルノーの吸う煙草から、灰色の煙が霧の様にゆっくりと立ち上る。


クリームまみれの僕と雪子は、その煙をいつまでもずっと二人で見つめていた。



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