紅梅サドン
寝袋を鞄の中へ常に用意する時とは、どんな時なのだろうーー。

何度も自分に問う。キャンプ、登山家、、非常事態。

非常事態ーー。



ルノーは何だかんだと理由をつけながら、冷蔵庫のビールをキャッキャッと楽しげに散々飲み込んだ挙げ句ーー。

殺し上げたいくらい上機嫌に今、僕の隣に寝ている。

雪子も『ルノーさんがお目覚めになる明朝まで待ちます』とマスリカの正体を気にしながらも、それから三分後には寝息を立てた。

間違いない。
今日は三人で宿泊だ。この2Kの部屋で。僕の部屋で。


『俺ねえ、寝袋持ってんの。

だから布団なんて心配ないよ。

意外と高いんだよ、寝袋って。重いしねえ。
肩壊れちゃう。』

ルノーは嫌気が差してくる派手な赤い寝袋にくるまって、僕の隣で安らかな寝顔をしていた。



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