紅梅サドン
『そういう所が好きなの』
僕が手渡した傘を持ったまま、真澄はそうつぶやいて微笑んだ。
そしてそのまま、真澄が僕の部屋に戻る事は二度と無かった。
ドアが閉まった後でさえも僕は何も言えなかった。
部屋を出て行く彼女を必死で引き留める事も、何も言葉を掛ける事も出来なかった、この世で一番情けない僕に何故、真澄はそんな言葉を残したのだろう。
『秋が嫌いになったの』
そんな言葉を残してくれた方がよっぽど楽になれたのに。