アイ・ラブ・おデブ【完結】
パリから離れて
フランス旅行の最終日は特急列車に乗り、ハルの親しくしているワイナリーへと訪ねた

TGVと呼ばれるその高速鉄道はフランス各地の主要都市を短時間で結ぶ日本の新幹線のような乗り物だ

窓を流れる景色は、密集した建物から緑溢れた長閑なものへと移りゆく

線路の近くの草を食む牛が見えたり、池の周りを水鳥が飛んでいたりと心が和む眺めを小夜は楽しんでいた

というよりは疲れた様子の遥に声をかけられなかったのだ

緩やかな斜面に背の低い植物が規則正しく並んでいるのが見え始めると、遥がやっと口を開いた

「あれがワインになるぶどうだよ
日本は頭の上に棚を作って栽培するけど、こっちはああやって育てるんだ
一房一房人の手で収穫するのは同じだけどね…
さあ…もうすぐ着くよ!
忘れ物はない?」

列車に乗ってから久しぶりの笑顔で小夜の手を握った

駅前に停めてあるタクシーに乗り、30分程でぶどう畑に囲まれたワイナリーに到着した

遥は迷うことなく建物の中へと入り、そこにいた恰幅のよい男性と親しく話し出した

二人は久しぶりに会った友人に身振りを交えて語り合った後、作業場の方へ歩き出した
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