アイ・ラブ・おデブ【完結】
自分に与えられた広い部屋には、大きなベッドが一つとパソコンが環によって準備されていた

その他には遥の私物が僅かにあるだけで、生活感のないインテリアショップのディスプレイのようだ

私物と言っても着替えが数枚にパスポート、財布、携帯、デジカメくらいだ

こんな日陰者のような生活をしている自分には相応しい簡素な持ち物だ

この部屋に環が入って来ることはないが、ここが彼女の自宅である事を考えて一番大切な物はきちんと隠してある

…あれだけは…手離すつもりはない!…たとえ渡せなくても…
僕の手に持っている

明日はイタリアンか…
一人のために作るなら…作る相手が違うな…
いつも僕の料理を美味しそうに食べてくれた
あの声をもう一度聞きたい…
目を輝かせて言う"いただきます"
目尻を下げて幸せそうに言う"ご馳走さまでした"

思い浮かべただけで遥の心はギシギシと音を立てて、締め上げられ苦しくなる
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