アイ・ラブ・おデブ【完結】
崩れゆく足元
…いったいどうする?
言われた通りに渡してしまえば良いと思うが…
それに私が持っていても仕方がない…
かといって、まさか捨てる訳にもいかない…
…持っているのも煩わしい
じゃあ思いきって…夕飯の時にでも…

ミーシャは気持ちを固め、作り甲斐のない料理をし始めた

あれから遥は部屋に閉じ籠もり、昼と夜だけダイニングに姿を現す

しかし、ミーシャの作る料理を僅かに口にするだけで会話もなく直ぐに部屋へ戻っていく

まるで生存確認をしているかのような毎日だった

初めてこの家に来た時、小夜を見つめる瞳はあんなにも輝いていたのに、今では目の前の物さえ写っていないのだろう

口許の無精髭は放置されたままにされ、青白い顔色は病人にでもなったようだ

生きる目的までも失い、今では刑の執行を待つ罪人のような生活を送っている

…あんな状態で手紙を読んでも…

そう考えてしまい、ずっと小夜からの手紙は手元にある

ミーシャ自身、何を待っているのかは分からないが、これまで渡せずにいた

今日、慎太郎に渡すように言われ、ようやく決心が固まった

エプロンのポケットにその大切な物を入れ、夕食をテーブルへ並べた
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