まだ、恋には届かない。
「松本が今抱えてる案件、まだ時間はあるんだろう」
「ええ。仕事自体、かなり前倒しで進めてあるんで、ぜんぜん余裕ですよ」
「でも、午後は町田さんの仕事、手伝わないと」
「バカか。こっちは大丈夫だよ」
「町田、悪いが送ってやってくれ」
「え。いや、ほんとに。帰るのはタクシーでもなんでも」
「あのさっ」

あーっ 面倒くせーっ
町田は髪をガシガシと掻きながら亜紀に言い諭す。
野田たちは、そんな町田に苦笑していた。

「怪我してるときくらい、少しは人を頼れよっ それ、お前の一番嫌いなとこっ 俺」
「まーちだ。大声出すな。松本、送ってもらえ、な?」

町田の大きな声に、肩をぴくんと小さく跳ね上げた亜紀に、野田は静かにそう声をかけた。
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