まだ、恋には届かない。
一つだけ。
美幸には難点があった。
そこをどう改めさせるか。
もしくは諦めるか。
折り合いの付け方に、町田は悩んでいた。

美幸の作った食事に、町田は恐る恐る手を伸ばす。
偶然にも、鶏肉と玉ねぎの卵とじがあった。
一口、思い切って口に含んだ。
がくりと、頭を垂れた。


ま、まずい。
なんで、こうなるんだろうな。
あいつの飯は。


可愛らしくて、町田の言うことには、何でもはいと答える素直な性格で、相性はいいと思っている。

が、いかんせん、美幸の料理が口に合わない。
どうやっても、町田の口に合わない。

本人が一生懸命なだけに、町田も困っていた。


あいつの飯。
うまかったなあ。
俺の好きな味。
ど真ん中だったな。


昼に食べた、亜紀の親子丼を町田は思い出した。


会社のコーヒーとかも。
あいつが淹れると、なんか違うんだよなあ。
インスタントなのになあ。


だからつい、亜紀がお茶を淹れてこようと席を立つと、自分の分も頼みたくて町田は彼女と目を合わせてしまう。
今日も、そうだった。
< 30 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop