永遠を繋いで
恋を始めた僕
こんな学校入らなければよかった。そう思ったのは入学してすぐのこと。
数年前から社会的に大きく取り上げるようになった『運命の赤い糸』。そんなものが目で見えるなんて、ましてや学校の授業に積極的に取り入れているなんて、至極馬鹿馬鹿しい。
元々冷めているというか、淡泊な俺は、そういったものに興味がなかった。だからそんなことでいちいち騒ぐ周りの女子にも興味をもつことはなかった。この容姿もあってか、告白やらストーカー紛いな女子もいたが、俺の態度を見て近寄る女子はいなくなった。そいつ等からすれば俺は特殊らしく、少し浮いているのは自分でも分かっていた。
面倒くさいのは嫌いだ。だから都合がいいと思った。運命がどうと騒いだ所で、なるようにしかならないのだ。十六年、面倒は避け流れに身を任せて生きていた。だからこれからもその生き方を変えるつもりはない。
中学校からの、俺としては珍しく仲の良い部類に入る先輩にそんな話をすれば、夢がないと笑われた。

そこに偶々現れたのが、真咲先輩だった。仲の良さそうに話し出す蓮先輩と涼太先輩の言葉を無視しながら、初めて顔を見ると、優し気に目を細められた。
綺麗に巻かれた長い黒髪と、幼さの残る笑顔。小柄で華奢で、単純に可愛いと思った。特別タイプだったというわけではない。目が合った瞬間、ただその時の笑顔に惹かれた。
思春期の恋愛なんてそんなものだと思う。恋は落ちるもの、なんてよく言ったものだ。今まで興味がなかったから、よくは分からないのだが。
 
後から聞けば、蓮先輩も涼太先輩も特別仲がいいらしかった。あともう一人、美人で有名な真美という人。いつも見かける時は四人でいた。俺が気付けば、真咲先輩も気付いて声をかけてくれた。裏表もなく、優しい人だと思った。彼女はいつも笑っていた。
俺はよく生意気だと言われるし、その自覚もある。しかし真咲先輩は嫌な顔一つしないで、俺に普通に接してくれた。だから俺も、心を開いた。もっと惹かれた。知りたい、近付きたい、そう思うようになった。
欲が出たら止まることを知らないように、次々と溢れていく。自分がこんなに貪欲だなんて、彼女に出会って初めて気付いた。

いつだったか、俺は彼女にお願いというものをした。彼女の声で、名前を呼んで欲しくなった。家族と限られた友人にしか呼ぶのを許さなかった名前を、初めて自分から呼んで欲しいと言うのは、なんだか気恥ずかしいもので。
だけど真咲先輩が呼ぶ声に、嬉しさの方が勝って、思わず頬が弛んでいた。あんなに素直に笑えたのは、大袈裟かもしれないが久しぶりだった。

柄にもなく本当に好きとはこういうことだと思った。彼女の言葉に一喜一憂してみたり、自分の感情が忙しく変化する。
初めてこの学校に入ってよかったと思った。
十六歳の俺の、大きな出会い。

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