永遠を繋いで
時計を見れば、朝7時をまわったところだった。
目の前には、携帯電話。ポケットにしまってはまた持って、の繰り返しをかれこれ三十分ほど続けている。
ディスプレイに表示される名前を見ながら深呼吸。かけ慣れた電話にこれほど緊張した時があっただろうか。例えるならば、恋する乙女。我ながら気持ち悪いと思いながらも、通話を押して耳にあてる。

三回目の呼び出し音が途切れると同時に聞こえたのは、なんとも間の抜けた声だった。緊張が解け思わず笑ってしまう。
迎えに行くと伝え、漸く俺の足は歩き出す。大きな欠伸が出るが、足取りは軽快だ。

少し着くのが早かったようで、真咲先輩の姿はまだ見えない。慣れない早起きのせいか、緊張が解けたあたりからひっきりなしに欠伸が出る。重たい瞼を擦っていると、真咲先輩が走ってくるのが見えた。

隣を歩く彼女に違和感を感じて見つめる。そんなに見ていたつもりはないのだが、俺を見上げた先輩と目が合う。
あぁそうか。いつもの大人びた化粧も髪型も、年相応というか少しだけ幼いものになっている。
感じた違和感はこれか、と心の中で一人納得しながら言葉を交わしていく。可愛いと言えば、照れたのを隠そうとしているのに隠しきれていないような、随分可愛らしい反応を見せてくれたので思わず笑みが零れた。

帰りも、一緒にいてくれるだろうか。
若干の不安もあったけれど嬉しいと返されれば、内心調子にのってしまう。顔にこそ出しはしないが、真咲先輩の一言で俺は今有頂天だ。
階段で別れたあと、通りかかった蓮先輩と真美先輩と会話をしたら苦笑されながら暴言を吐かれた。気分がいいので見逃すことにする。

「無表情の饒舌って怖いわ。何か良いことあった?」

「先輩みたいなへたれには教えたくないです」

「俺へたれじゃないし!ね、真美!」

「いやまぁ知りたいなら教えてあげますけど」

「何で上から目線?真美もシカトしないで傷付く。でも教えて」

「聞くのかよ。…真咲先輩と一緒に来ました。帰りも一緒なんで邪魔したらしばきます」

思わずどや顔で言ってしまったことを後悔する。ぽかんと口を開けた二人を見て羞恥心が込み上げ始めた。
ついに笑い出して可愛いと言い出した蓮先輩を叩いてやる。

「まぁ気付いてたけど、可愛い所あるねー茜くんも」

「真美先輩まで…」

「応援するよー!ねぇ蓮?」

「うん」

強い味方が出来た。例え邪魔が入ろうものなら蹴落とすまでだが。それでも二人は心強いことに変わりはない。
頑張って、と手を振る真美先輩とは明らかに違う笑顔を浮かべる蓮先輩にもう一発軽い蹴りをお見舞いしておいた。
俺を可愛いと言って不快にならないのは真咲先輩だけだ。感謝してるとは、言ってやらないことにした。
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