永遠を繋いで
屋上に行くと蓮先輩にたかる涼太先輩をスルーして真咲先輩の隣を陣取る。
友達はいいのかと訊く真咲先輩に事情を言えば、裏庭に視線を投げた。俺も同じように眺めていると、幸せそうだね、ぽつりと聞こえた呟き。
視線の先にいる初々しいカップルは確かに幸せそうだ。佐野もその隣りにいる彼女も相手を慈しむような、そんな表情をしていた。あいつのあんな顔初めて見た、とぼんやり思う。そこにはいつもの調子の良いふざけたような雰囲気は感じ取れない。
ずっと長いこと想い続けてきた相手と結ばれたのだから、当然といえばそうなのだろう。何はともあれ、本当に良かったと心の中で祝福する。色んな想いと葛藤し悩む姿を近くで見てきた友人としては、実に喜ばしいことだ。
同時に胸に込み上げたのは、羨望。

俺も欲しい、あの赤い糸が。真咲先輩に繋がる運命が欲しい。

「あれが見えたら離れないらしいじゃないですか。まぁあってもなくても離してやりませんけどね」

「じゃあ、そう思えるくらい好きな子がいるんだ?」

思わず目を見開いた。
周りの気持ちには敏感なのに、自分が絡んでいるとなると鈍感らしい。俺の矢印が自分へと向いていることにすら、彼女は気付いていない。
前途多難だと言えば、きょとんとした瞳が俺を見つめた。
道のりはまだまだ長いかもしれない。
そう思ったのもつかの間、涼太先輩に真咲先輩との間を割り込まれ耳元でギャーギャーと騒がれる。邪魔が入ったことに顔を歪めて反撃していると、動きの止まった三人が目に入った。
気付いた涼太先輩と共に声をかけようとすれば、飛び込んできたのは先程まで欲しいと言っていたそれで。一本の赤い糸が、蓮先輩と真美先輩を結びつけていた。
それが現れるのを目の前にしたのは初めてだった。この場にいた全員がそうなのだろう。固まったまま、まるで時間が止まったようだ。外から聞こえる人の声にはっとして、少々躊躇ったが退散しようと涼太先輩をつついて促す。

「俺達先に戻るわ」

「…えと、後でね」

「あ、うん」

逃げるように扉の方へ走っていく涼太先輩に続こうと、俺も立ち上がる。
ちらりと横目で見れば未だ固まったままの蓮先輩と俯く真美先輩。あのへたれが行動するのを待っていたらきっと、日が暮れてしまう。蓮先輩だけに聞こえるように、そっと耳打ちをしてその場を退散することにする。

扉を閉める瞬間聞こえてきた、大声の愛の告白。
どうやら男を見せたようだ。脱へたれおめでとうございます、小さく呟いた言葉は俺なりの精一杯の祝福。
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