永遠を繋いで
何事もなかったかのようにあたし達は合流した二人と帰宅した。冗談だったのかと錯覚したけれど、それはきっと違う。会話こそするものの、あれからあたしと目を合わせることは一度もしなかった。
当然と言えば当然か。あんなことがあったのだ、今後はどうなるかも分からない。

先日見た茜くんと綺麗な女性と、泣きそうな顔の涼太が頭の中をぐちゃぐちゃに巡る。今は上手く隠せているものの、こうも思考をかき回されるといつか爆発しそうだ。一つずつでも、早めに解決していかないと全てが綻んでいく気がする。
曖昧にしているのは自分なのに、それに悩んでいるなんて自業自得だ。
大事な人を苦しめて何がしたいのだろうと自己嫌悪する。自分が傷つきたくないがための選択をとってばかりいるからいけないのだ。

一人になるとどうも駄目だ。小さく吐いた溜め息は暗い部屋に虚しく消える。

なんだか眠れなくて寝返りをうって携帯を覗き込んだ。時計はもうすぐ次の日を迎えようとしている。それで早く進むわけでもないのに、何度かそれを繰り返してベッドに放った。
途端に、部屋に鳴り響いた無機質な着信音。早く出ろと言わんばかりに鳴り続けるそれは電話のようだ。
誰かと話すような気分でもなかったのだが、一向に鳴り止む気配のないそれに確認もせず通話を押した。はい、短く応えれば少しだけ掠れた低い声が耳に入り込んだ。

『起きてて良かったっすわ』

「茜くん?熱あるって言ってたのに大丈夫なの?」

心配しました?なんて声の主は笑っている。心配もするだろう、風邪で休むなんて滅多にない上に、向こうから送られてきていたメールも中途半端に途絶えていたのだ。
しかし思っていたよりも元気そうな声に安堵し、ほっと息を吐く。

「もう治ったの?大丈夫?」

『うん、でも外寒いっすね』

「外って、」

電話の向こうからは確かに車の音やら、微かだが足音も聞こえる。こんな時間に、それも病み上がりだというのにどこに向かっているのだろう。

「大人しくしてないとまたぶり返すよ」

『先輩のお願いでも今はきけないです』

足音が止んだ。目的地に着いたのだろうか。

『今いつもの所なんですけど、』

まさかと思い窓を開けると、マンションの下に一つの人影が見えた。暗くてよくは見えないが、そこでこちらを見上げるのは茜くんだと理解した。

驚いたまま見ていると、下にいる彼がふと笑った気がした。真咲先輩、耳にあてたままの携帯から優しい音で呼ばれる。

『誕生日、おめでとう。真咲先輩』

丁度午前零時。
あたしは通話を切るのも忘れて彼の元へ走った。



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