永遠を繋いで
まだちらほらと歩いている人の目も気にせず、茜くんに飛びつくように腕を回した。その勢いで少しだけ体がよろけた気がするが、笑みをこぼしたのか頭上から声が聞こえる。

まさか来てくれるなんて思わなくて、それどころか立て続けにあんなことがあり誕生日なんて頭の隅に追いやられていた。けれどもう、ぐちゃぐちゃ考えていたそんなことがどうでもよくなるくらい、ただ嬉しくて。
こんなに感情を抑えられなくて、自分から抱きつくなんて初めてだ。

「びっくりした」

「一番に言いたくて。ちゃんと顔見て、言いたかったんです」

「すごい、嬉しい」

こっち見て、その言葉に顔を上げると、いつもよりやわらかい表情の茜くんと目が合った。鋭い目が優し気に細められ、思わず自分の口元も弛んでいく。

「おめでとう、先輩」

「ありがとう」

ぎゅっと回された腕に力が入って、あたしも少しだけ強く茜くんの体を抱き締めた。心が、ぽかぽかする。

しかし空気が冷たいせいか、茜くんの触れる手がいつもより冷たくて、ここが外だったことを思い出す。冷静になってみるとこんな風に感情的に行動してしまったことに顔に熱が集まる。思い返してみれば鍵すらかけずに出てきたことが頭を過ぎった。

少しぼうっとしてしまったようだ、あの、と控え目に声を発した茜くんにはっとする。

「一番に言えたみたいだし、顔見たら帰ろうと思ってたんですけど」

「あれ、帰っちゃうの?」

「風邪完璧に治ったわけじゃないからうつすかもなんすけど…でも迷惑じゃなかったら、泊まって、いいすか」

ここまで来てそんなことを気にしていたのかと、茜くんが困ったように呟いたものだから苦笑した。それに何か勘違いしたのか、眉を下げ困った顔を見せる。

「いいよ。今日は、帰んないで」

今は傍にいてほしくて離れたくなくて、ひんやりとする手をとれば満足そうな顔をして笑ったように見えた。

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