一般人になるまで
そういえば、将来の夢なんて考えたことなかったな、と記憶を辿ってみれば、昔から将来の夢は?と聞かれれば、公務員ですと返していて深く考えようとした時期すらなかったことを思い出す


「へぇ、あなた医者になりたいの、ふぅん」

ニヤニヤしながら、コイツにもそんな真面目な一面があったことを意外に思いながら、デートに行ってやるかと密かに考える


「だって血が見れるしね」

前言撤回
真面目でもなんでもなかった
趣味のために医者になろうとしていた一般的に言う屑(くず)だった

「ちょっと見直した私が馬鹿だったわ」

「え、惚れ直した?」

直すもなにも、惚れたことすらないと頭をバシバシと叩く

「ということで!帰りに病院に行こうな!」

元気に走り去っていく拓人を見ながら、まだ休み時間で次の授業があることを思い出し、本日何度目かの溜め息をつきながら教科書を出した

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