一般人になるまで
入院してる間は幸せだった
決まった時間ちゃんとしたご飯が食べれる
猫の鳴き声を聞かなくていい
ベッドはふかふかであたたかい
人は俺を叩かない、殴らない、蹴らない
こんにちは、と挨拶をしてくれる

なんて素晴らしいところなんだろう
父もこんな気分でこの病院に通っていたのだろうか

父や俺が通いつめ、入院を繰り返したこの病院こそが、今日由紀たちと行った総合病院だ

病院から出たくない
医者になろう
それが将来の夢が決まった瞬間だ

生きているのもツラいという人を、俺の手で救いたい
あの猫たちのように
首を絞めて殺してあげたとき、一瞬ありがとう、という顔をしてくれる猫たちのように


人を殺すのは
人を助けることと
同じなのだ

俺が感じたように

だから俺は
人殺しになりたい
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