2番目でいいから【完結】

春兄の言葉

僕は、できるだけ智恵子の怪我が、軽いものであって欲しいと思った。

しかし、身体の目立たないところへの狙っての無数の痣や傷跡。
果たして、軽く済むのかわからなかった。

それに、身体の傷は癒えても、心の傷はそうはいかないだろう。
これから、智恵子が、本当に回復できるのは、いつになるのだろう。
僕は、もちろん、一生智恵子を支えていくつもりだ。

診察が済み、春兄は「見た目に比べて、怪我は酷くないよ。」
「2~3日は、熱がでたりして辛いかもしれないけど、大丈夫。」と言った。
そして、智恵子に処置室で、怪我の手当てをして貰ってくるように言った。

智恵子が部屋を出ると、春兄が「冬哉。智恵子ちゃんの怪我だけどな。」と言い出した。
「すぐに、治らないのか?」と僕が聞くと「怪我はすぐに治る。安心しろ。」
「ただ、あの怪我のさせ方は、【怨み】だぞ。」という。
「【怨み】?」と言うと「智恵子ちゃん自身へのだ」
「心当たりないか?」と春兄は聞いてきた。

イジメのことを話すと、「たぶん、そのイジメの源が【怨み】だ。」
「智恵子ちゃんとつきあう前に、原因があるはずだ。良く、思い出せ。」
「そして、智恵子ちゃんから、絶対に目を離すなよ。」
「次は、本当に、危ないぞ。」と春兄は言った。

「死なれたら、何ももうそれ以上何もやってやれないんだぞ。」と春兄は言った。
春兄は、心から愛してやまなかった女を集団レイプされた。
そして、その写真をばら撒かれ、彼女は気がふれて、自殺をした。
春兄は、ずっと支え続けていたけれど、正気に戻ることはなかった。

それ以来、春兄は、特別な女は作らない。
まだ、きっと忘れてないんだろう。

そんな春兄の何もやってやれないは、重たかった。
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