七つの椅子
「地図なんかある訳ないでしょ?」
俺を見下ろすエレナは呆れて溜め息を漏らす。
あぁ…、今頃になってエレナが椅子の所有者であることを思い出した。
「私の持つ能力の椅子で椅子の在り処を感じ取る事が出来るの」
エレナは起き上がり裸体に白いシーツを巻くと、煙草に火を点けた。
ルージュの落ちた唇をすぼめ、白い煙を吐いてから再び椅子の在り処について語り始めた。
「これは私の仮説だけど、椅子には見つかる順番があるみたいなの。私は最初に能力の椅子を見つけて、美の椅子、性の椅子、竜治の所有する金の椅子の順番に探しだしたの。今感じているのは“運の椅子”でそれ以外は感じられない」
エレナはまだ少し長い煙草を、サイドテーブルに置いてある灰皿に押しつぶした。
「その運の椅子は、何処にあんの?」
二本目の煙草をくわえたエレナの背中に聞く。
エレナは人差し指と中指で煙草を挟み、口から離すと答えた。
「5つ目はフランスよ」