七つの椅子

私は全身の力が抜け、足が震えて立っているのがやっとだった。

「どうしてよ……竜治…私っ…ちゃんと貴方の事、好きなのに……」

涙が頬を伝う。

夢主である竜治は私と繋がっていても、無意識の内に私に和華菜を重ねていたんだ。

口ではいくらだって愛を囁ける。

愛が無くたって体を重ねる事はできる。

わかってた……。

あの日、清太の所で竜治は和華菜に愛してると叫んだ時から。

否、それ以上前から解っていて、その事実から目を背けていた。

愛されてるのは私じゃない。

愛されてるのは、清太に寄り添っている和華菜。

「俺が満足するまで付き合ってもらうからな」

意地悪な笑顔で私に言ったことを和華菜にも言っている。

私はこの先を経験した。

同じ事を和華菜とする所なんて見たくない。

私は目を閉じて、両耳を塞いだ。




< 86 / 174 >

この作品をシェア

pagetop