シーソーが揺れてる
足音がついに春香の真横で止まると、その人はそのままベンチに腰を下ろした。
やがて春香の左側から「かちゃっ」という缶コーヒーを開ける音がした。
春香はその人の横顔をちらっと見てみる。
「ん?」
その横顔に、春香はぴんと何かを感じた。
見たことある!
春香は心の引き出しの奥に
手を突っ込んでごそごそと記憶を探り始めた。
その名前を思い出すまでにそれほど時間はかからなかった。ある意味で印象的な人物だったから。でも・・・。
春香は躊躇いがちに身を竦めた。
その人は今もまだゆっくりとコーヒーを味わっている。春香と同じ風に吹かれながら。
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