シーソーが揺れてる

「うん、そうなんだよー」
ベランダに立ち広美はさきほどまでの出来事を電話越しの孝弘に話終えると、ため息混じりに言った。
「なるほどね。で、今はどんな様子なの?」
「泣き疲れて眠っちゃったみたい」
「そっかー。でも、なんか心配だね」
「うん」
夏が始まったばかりと言うこともあって、夜のベランダはまだ生暖かい風が吹いていた。
「それでさあ、孝弘君に一つおねがいがあるんだけど」
「何?」
「明日車貸してくれない?」
「え?」
「春ちゃん明日通院の日なんだけど、あの状態じゃ一人で出歩くのはまずいんじゃないかと思って」
「うん」
「だから私が送り迎えしてあげようかなあって」
「・・・!」
広美の言葉に、電話の前の孝弘は慌てふためいた。
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