シーソーが揺れてる

再び春香の携帯がなったのは夜8時過ぎのことだった。
「もしもし」
こんどは躊躇うことなく春香は電話に出た。
「あっ、もしもし」
「あー、・・・」
受話器から聞こえた声は予想していなかった物だった。
「片山くん?」
「こんばんは。体調どうですか?」
「あー、うん、今は何とか元気」
ほんの一瞬会話が途切れた。
「風邪ひいたんですか?」
再び良太は尋ねた。
「ん、うんそうみたい・・・」
なぜ今嘘をついたのか、春香は自分でもその理由が分からなかった。
「今夏風邪流行ってますからねえ。職場でもマスクしてる人何人か居ますよ。欠席者も今日一人出たし」
「そっ、そうなんだ」
ここでまた会話が途切れた。
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