シーソーが揺れてる
「ねえ、実習ってどこ行くの?」
冷蔵庫からお茶のペットボトルを出しながら春香は広美を見ずに聞いた。
「老人ホームだよ」
「ふーん。どこの?」
「ほら、西中の近くに最近新しくできたとこ」
「西中の近くに新しくできた老人ホーム・・・?」
冷蔵庫から出してきたお茶を一気に飲み干した春香ははっとした。
例の公園に行く途中に住宅地の前を通り過ぎるのだが、それの先に老人ホームが去年からできたと言うような話を、音大に居た時久しぶりに連絡を取った中学の友達からちらっと聞いた覚えがある。
「うん」
「へえ、そうなんだー」
「実習って初めてだからどきどきするよー」
日焼け止めクリームを塗りながら広美は言った。
「そうだよねえ。老人ホームでしょう?やることたくさんあってたいへんそうだよねえ」
春香がそう言った時、ベッドの方から携帯のバイブの鳴る音が聞こえてきた。
「春ちゃん携帯なってるー」
日焼け止めクリームを塗り込んだ顔を春香に向けて広美は叫んだ。
「あーうん」
春香は飲みかけのお茶を急いで冷蔵庫にしまうとベッドまで走った。
手に取った携帯を見てみると、メールが届いているようだった。
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