シーソーが揺れてる
「実家はどう?のんびりできてる?部屋に戻るのいつになりそう?また決まったら教えて」
差出人は広美だった。急に春香の頭が冴え始めてきた。
そうだった、広美の部屋にまだ荷物を残してあったんだ。今日は夏服を取りに行くと言う名目で実家に帰ってきたんだった。
危なかった。もし広美がメールをくれなかったらこのまま実家に居着いてしまうところだった。でもべつにそれでもいいかなあと今の春香は思った。音大を辞めたことに家族はそれほど怒っていなかったし、もしかしたらいいバイトを探してきてくれるかもしれない。ピアノのことは引っかかるけれど・・・。
春香は広美にメールではなく電話をかけた。今のこの気持ちを伝えるにはメールではめんどうだと思ったからだ。
「もしもし」
どことなくぼうっとした声で広美は電話に出た。
「あー私だけど、もしかして今寝てた?」
「あー、ん、うんそう」
広美の声は少しあせっていた。ふと春香の目に、机の上の携帯ラジオの時計が飛び込んできた。
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