逃げる女
『嘉…島じゃん…ま、まだ帰って…なかったんだ…』


明らかに動揺してるクラスメイト。目線だけ動かして、他のクラスメイト達を見てる。



私もつられて見ると、皆一様にヤバイって顔をしてた。





机の上に勝手に包装を開けて出させた、本が置いてある。




その側には森田君が立っていて、私と目が合った。





「―ッ!!」



私は思い切りその場から走り出した。



『嘉島っ!!』



後ろから森田君の声が聞こえてくる。




けれど、止まらない。止まってなんかやらない。





目が合った森田君は…
森田君まで、ヤバイ
そんな目で私を見てたんだ。








角を曲がり、階段を降りるのではなく、上へ駆け上がる。そして上の階にあるトイレへ駆け込み、そのまま座り込んだ。






「……ッく…うぅ…」




私はそのまま声を押し殺して泣いた。





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