逃げる女
『あのさ!』



車を降りた私に助手席の窓を開けて話し掛けてきた。

『来週から雪祭り始まるだろ?店休みの日に一緒に行かないか?』



「え?」



『それくらいのチャンスくれないか?』


「…はい。」


『予定空けといて。』






雪の降る中、車が見えなくなるまで見送っていた。











家の中へ入ると、1日人がいなかった部屋は外と代わらない位寒かった。


電気をつけて、ストーブのスイッチを押す。



部屋が暖かくなるまで、コートも脱げない。



部屋の中で吐く息が白いなんて、北海道へ来て初めて体験した。





雪祭り。
北海道へ来てから私は1度も見に行ったことがなかった。


雪祭りだけではない。

夏に行われる、ビアガーデンに店の人達と行った事があるくらいで、街中で行われるイベントには行った事がなかった。



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