気ままに生きる
 この後くらいに、山崎洋子さんの『天使はブルースを歌う』(毎日新聞社刊)って本の取材を受けたこともあったけど、何を言ったかわからないんだ。この頃はお酒を飲んでいて、もうひとりの自分が中心で生きていたから本当になにをしゃべったか覚えていなくて……。山崎さんもびっくりしたと思うよ。

 メリーさんのこととかさ、外人墓地なんかの話だよね。メリーさん(ハマのメリーさんのこと、老女になっても白粉を厚く塗り、フリルがついた真っ白なドレスを着て出没し、戦後の街娼のなれの果てとも言われた、横浜の中心部で目撃されたため有名だった)のことももちろん知っているけど、メリーさんだけじゃなく当時はメリーさんと同じような人はたくさんいたと思うよ。メリーさんはその中でも派手だったから目立ったんじゃないのかな。本牧にもメリーさんと同じような人がいたしね。とにかく変わった人はたくさんいたはずだね。

 その本にはたくさんの混血児の赤ちゃんのお墓があるって書いてあったけど、これには思い出があるんだ。俺がアンパンやっている頃に友だちとよく徘徊していたんだ。23~24歳の頃かな。ある時、山手駅からちょっと丘を上がったあたりの一角を歩いていた。がさやぶがあって、そこを抜けたら、外からは分かりにくい感じのところだったんだけど、ちょっと広い場所があった。霧が出て見えにくかったんだけど、広い場所なのが分かったよ。夜が明けてきて周りを見回したら、たくさんの石ころが同じ間隔で置いてあった。その時は、ここは普通の場所じゃないなって思わせる雰囲気を感じた。最初はなんだろうと思ったんだけど、十字架みたいなものもあって意味が分かった。石ころはお墓のかわりだったんだ。

 それから、この場所には行ってないけどね。
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