気ままに生きる
 ママリンゴのオーナーには随分お世話になった。だけどお店は危ないところだったな。演奏中にヤクザの殴り込みとかもあったよ。演奏中に従業員の人がフォークで顔を刺されたり、ろうそくを置くガラスの入れ物で頭をガコーンと殴られたりしているところが見えるんだもん、えって思うよね。こっちもいきなり「演奏やめ!」って言われてやめると、「やめるな!」って言われるし。「おいっ、ちょっとベース貸して」って言われて使っていたロケットベースを貸して、その人が弾いているところを見てたりしたこともあったよ。

 今考えると面白かったけど、人生の中で一番鬱になった時期だったよ。そのうち京都弁も嫌になってきて、聞いていると気持ち悪くなってきたくらい。帰ろうと思えば帰れたけど、帰っても別にやることもないし……、結局しばらくいたんだけどね。譲ちゃんと酒飲んで、風呂行ってそういうことで少しは気を紛らせていた。そういった意味では、意外に当時まじめな生活を送っていたね。こういう夜の仕事をやったことなかったから体がかったるかったのと、よく食べて、よく酒を飲んでいたのは覚えている、だから当時すごく太ったよ。
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