始末屋 妖幻堂
 女はしばらくその場に座ったまま、じっと老人の出て行った後を見る。

 小さな小間物屋『妖幻堂』。
 店先には花街近くという立地に合わせて、女子(おなご)好みの簪や手鏡、櫛といった可愛らしい小物が並んでいる。

 店先だけ見れば、確かに小間物屋だが、ちょいと奥に目をやれば、女が座っている背後には、何やら怪しげな張り子細工の人形や、何かもよくわからないモノが転がっている。

 店の名前も、考えてみれば不気味である。

 妖幻堂は、表向きは小間物屋。
 裏の顔は、持ち込まれる悩みを解決する、何でも屋なのである。

 他愛ない悩みもあれば、この地ならでは、妖しげな相談事まで、妖幻堂に頼めば解決してくれるというのは、知る人ぞ知る噂だ。
 奥の座敷に転がる妖しげなモノと同様、ここに集う者らも、普通でないという。
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