執着王子と聖なる姫

 違うから愛おしい

その夜佐野家では、今後の生活のために家族会議が行われた。

間違いなくややこしくなるので、男二人で話し合って女二人には後で報告しようという事前の打ち合わせだったのだけれど、それを佐野家のワガママ放題のテロリスト二人が許すはずもない。

「そんなのズルイ!レイもリュージと結婚する!」

ふて腐れた莉良をマリが「そうね!」と後押しし始め、結局ややこしいことこの上ない事態に陥った。男二人は、「やれやれ…」と肩を竦めるしかない。

「レイ、マナにはマナの事情があるんだよ?」
「そんなのどうだっていいわ!どうしてマナが良くてレイはダメなの?」
「レイちゃんがお嫁に行っちゃったら、パパが悲しいからじゃないか」
「メーシーにはマリーがいるじゃない!レイのことなんて見てないくせに!」

痛いところを突かれ何も言えなくなったメーシーを密かにほくそ笑む愛斗に、佐野家の女王が問う。

「すぐに結婚するの?」
「まぁ…セナがそうしたいって言ってるから」
「アンタのintentionを聞いてるんだけど」
「俺は…」

ふとレベッカの笑顔が脳裏を過ぎり、愛斗はそれを掻き消すように大きく首を振ってマリの右目を見つめた。

家に戻れば、すぐさま外されるコンタクト。偽っていないマリの右目は、愛斗と同じ褐色だ。何の因果か、マリが忌み嫌ってきたそれを見事に受け継いだ長男。そのおかげで、愛斗はマリに愛されていると感じたことがなかった。


「セナは…俺の右目を綺麗だって、愛してるって言ってくれた。俺はそれだけで十分だから、あとはセナの好きなようにすればいいと思ってる」


マリはそれ以上何も言えなくなった。
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