紅蓮の斜陽
なんと返答すればよいのか解らない。
質問は簡単、新撰組の隊士は哲学を考えるのか…答えは「はい」か「いいえ」で十分に足る。
隊士たるがすべきは、国のために敵を切ること。
「わかるよな、哲学はお偉い学者の考えるこった。」
『生きる意味』を探るのは哲学の分野。
学と教養がきちんとある人間のすることで、字すら殆ど読んだことのない緋次の仕事ではない。
しかし。
「そんなことは解っている!」
「じゃあ『生きる意味』なんて大層なこと考えてないで生きたいように生きればいいじゃないか、剣など持たずに筆を取れ、書物を読め、師に学んで世界を知れ」
「俺はそんなことをしたいわけじゃ」
「だったら何がしたい」
男の糾弾に容赦はない。
そう、まるで『生きる意味』を考える緋次を咎めているかのように、紡がれる言葉は刺々しい。