カローレアの金
鷹を止まり木の上に乗せ、ジャンはアンを睨んだ。
「お前が作戦を無視する可能性だって考えてたに決まってんだろ」
「…ちゃんと最初は作戦守るつもりだった」
「はっ‼どうだか‼」
ジャンは肩をすくめた。
「とにかく…お前しばらく盗み禁止な。衛兵の目が金髪に過敏に反応するようになっただろうからな。今日の一件で」
「……わかったよ」
アンは小屋を出て行った。
ジャンは頭を掻きむしり、椅子にドサリと腰を下ろす。
止まり木の上にいる鷹が首をかしげた。
「まだまだだな…俺も、あいつも。…アンはどんどん難しくなっていく…」
ジャンはそう小さくつぶやき、アンと初めて出会った時の事を思い出す。
アンは、ジルと同じ孤児だった。
まだレベペ盗賊が小規模で、名が売れていなかった時のころ、小さな町にジャンは移動した。
その時偶然出会った少女がアンだった。
当時のアンは、金髪がくすんでいて体中が痣だらけ。
そして、あばら骨が浮き上がるほどやせ細っていた。
「お前…どうしてそんな体なんだ?」
思わず、若かりし頃のジャンはそう声をかけてしまっていた。
するとアンは焦点の定まっていない目でジャンを見上げ、か細い声で
「……孤児院で…毎日遊んでるから…」
そう答えた。
「遊び…?遊んでいてできる痣じゃないだろ、それ」
ジャンは眉をひそめた。
「ううん、遊びだよ……毎日孤児院のお友達が石投げてくるの…それに耐えれば……きっと仲良く…」
「…食事は?食べてるのか、ちゃんと」
「お友達にあげてる……そうしないと…一緒にいさせてもらえない…」