カローレアの金
政務室で仕事をしていたローズ女王の元に、大臣が走ってやってきた。
「女王陛下‼」
肩で息をしながら大臣が嬉しそうにしている。
「どうしました?なにか良いことでも?」
「お喜びください‼街を巡回していた衛兵の二人組が…あの金髪の少年を捕らえてきました‼」
「何ですって!?」
女王は椅子から立ち上がり、慌ててかけ出す。
「陛下‼走るなんてはしたないですよ‼」
「あなただって走ってきたじゃないの‼」
女王は笑いながら、淡い紫色をしたドレスの裾を持ち上げ、王の広間へ駆けて行く。
女王が扉に手をかけようとしたとき
「お待ちください‼」
大臣が王冠を抱えてやってきた。
「王の広間は王の偉大さ、威厳を示す場所です。王冠を忘れてはなりません‼」
「…わかりました」
女王は仕方なく王冠を頭に乗せた。
そして呼吸を整えてからゆっくりと扉を開け、玉座へと向かう。
横目でちらりと金髪の子供を見ると、王の広間を見回していた。
部屋は広く、天井は高く、赤い絨毯が堅苦しい雰囲気を漂わせていた。
アンは、その赤い絨毯の上であぐらをかいていた。
女王が玉座へ腰を下ろすと、アンは女王をまっすぐ見つめた。
「…あなたが、最近話題になっていた子供ね…」
「へえ、話題になってるんだ。王城で。光栄だなあ」
アンはへらへらしながら答える。
その声は、低くもなく高くもなかった。