カローレアの金
「で、でもお頭…」
「いいから出せ!」

その言葉に馬車は動き出す。

「…んだよ、それ…っ」

アンは拳を固く握りしめ、馬車を追う。

「ふざけんなクソ親父!関わるな?手遅れだよ!もう城の皆知ってる!私がレベペだったってことくらい!だから…親父達がいくら私と関わりがないと言い張ろうが、私は言い続けるぞ!レベペと関係あるってな!レベペで育って、レベペの頭は私の親父だって!!」

アンの足はもう限界だった。足を止め、息を整えて大きく吸い込み、走り続ける馬車に向かって

「…今まで、楽しかったよ!!!!お父さん!!皆!!!どこに行っても…捕まるなよ!!!」

どんどん小さくなっていた馬車がにじんで見える。
アンの頬を、涙が後を絶たずに伝う。

「…聞こえたか?お頭」
「…」
「レベペで育った…なんて、嬉しいこと言ってくれるな。あいつにとっての故郷は、レベペってことだろ?」
「今まで楽しかったってな……。俺だってアンと楽しかったぜ…!」
「ばっか!おめえ何泣いてんだよ!」
「うるせえ!お前もだろ!」

騒がしい仲間を他所に、ジャンはそっぽを向いていた。

「…お頭?」
「…あいつ…『お父さん』なんて何年ぶりに言ったんだよ…」

そう言うジャンの頬には、涙の筋が浮かんでいた。
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