甘い誓いのくちづけを
「もっと話していたいんだけど、もうすぐ会議なんだ……」


零された言葉に落胆した後で、ハッとする。


何、落胆してるのよ……


まるで寂しさを感じたように何かを訴える心を無視して、頭の中で必死に言葉を探してから口を開いた。


「あの、この間はご馳走様でした」


そう言った後で、これは真っ先に口にしなければいけなかった事なのだと気付く。


いい歳してお礼をきちんと言えなかった自分が、とても情けなく思えた。


「バーでのお金も、ホテルの宿泊代も受け取って貰えなかったのに、夕食までご馳走になっちゃって……」


「“ごめん”は、なしだよ?」


慌てて付け足したあたしの言葉を、理人さんが落ち着いた声音でやんわりと遮った。


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