甘い誓いのくちづけを
「瑠花ちゃん」


唇をギュッと噛み締めて胸の痛みを誤魔化した直後、少し離れたところから柔らかいトーンが耳に届いた。


「理人さん」


心をそっと撫でるような優しい声音に、自然と笑みが零れる。


同時に、胸を占領してしまいそうだった鈍い痛みが、目には見えない柔らかいものにそっと包まれた。


たったそれだけの事で感じたばかりの傷が癒された気がして、密かに理人さんに感謝してしまった。


「急にお呼び立てして、すみません」


「それはいいけど、どうしたの?」


立ち上がって頭を下げたあたしに、理人さんが不思議そうな表情を向けて来る。


彼は仕事中に抜け出して来てくれたみたいで、相変わらず高級そうなスーツをきっちりと着熟(キコナ)していた。


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