甘い誓いのくちづけを
「あの……」


小さく深呼吸をして、理人さんの瞳を真っ直ぐ見つめ返す。


「理人さん、お誕生日おめでとうございます」


その言葉とともに、持っていた紙袋を差し出した。


「…………え?」


心底驚いたのか、理人さんは綺麗な瞳を大きく見開いていて…


そのまま数秒間、あたし達は沈黙に包まれた。


「……あの、今日って理人さんのお誕生日なんですよね?」


反応が無い事に戸惑って思わず控えめに確認してしまうと、理人さんはハッとしたような顔をした。


「……俺、教えたかな?」


「いえ」


「じゃあ、どうして?」


「実は……」


あたしは、不思議そうな表情をしている理人さんに小さな笑みを向けた後、昨日の事を話し始めた――…。


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