甘い誓いのくちづけを
「瑠花ちゃんに着けて欲しいんだ」


こんなにも素敵な事を言われて断る理由なんて、どこにも無いけど…


理人さんにネクタイを着けるなんて、絶対に緊張し過ぎてどうなるかわからない。


また醜態を曝す事になるかもしれないと、不安になる。


それでも心の中の天秤は正直で、それに応えるように秤(ハカリ)をグラグラと揺らして促して来る。


「ダメ?」


その上、甘くねだるように顔を覗き込まれてしまったら、いよいよ“断る”という選択肢は消えてしまって…


「ダメ……じゃないです、けど……」


しどろもどろ答えながらも、右手はしっかりとネクタイを受け取っていた。


理人さんは嬉しそうに瞳を緩めて、あたしの背丈に合わせるように少しだけ前屈(カガ)みになった。


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