甘い誓いのくちづけを
バッグから出したキーケースから外した文博の家の合鍵とともに、エンゲージリングの入った箱を差し出した。


「じゃあ……」


彼は、気まずそうにしながらもそれをしっかりと受け取って、伝票を持った。


立ち上がった文博が、どこか名残惜しげに振り返る。


だけど…


「……式場は、俺の方でキャンセルしておくから」


次の瞬間に口を開いた文博は、そんな素振りすら見せずに静かにそれだけを言い残し、そのまま振り返る事無く立ち去ってしまった。


彼にとって、あたしとの2年間はその程度のものだったのかもしれない。


だったら尚更、こうなって良かったんだと思いたい。


それなのに…


あたしの心に残った文博への気持ちが、割り切る程の開き直りを持たせてはくれなかった。


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