甘い誓いのくちづけを
同じホテル内の地下にあるバーに連れて来られた所で、ようやく握られたままの左手を引っ込める事を許された。


「ここ、来た事ある?」


無言で首を振って応えると、まだ名前も知らない男性は柔らかく微笑んだ。


甘やかさすら感じるその表情に、ほんの少しだけ心拍数が上がる。


「そう、良かった。君が初めて来た場所で過ごす時間を、共有出来る」


まるで好きな人に投げ掛けるような台詞をサラリと吐いた男性(カレ)に、胸の奥が大きく高鳴った自分(アタシ)は単純なのかもしれない。


それでも、こんなにも眉目秀麗な男性(ヒト)からそんな事を言われて、ときめかない女性(ヒト)の方が少ないと思う。


まだ胸を高鳴らせたままのあたしを、やって来た店員と男性(カレ)が誘導してくれた。


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