甘い誓いのくちづけを
思ったよりもずっと近い距離に何だか緊張して、心臓がドキドキと騒ぎ始める。


「好きなカクテルは?」


そんな中で投げ掛けられた質問に、思わず視線を泳がせてしまった。


ここに来るまで、特に男性(カレ)から話し掛けられる事は無く、あたしも何を話せばいいのかわからなくて無言を貫いていた。


だから、今も上手く言葉を紡げそうに無かったけど…


目の前で開かれたメニューに視線を遣ってから、怖ず怖ずと口を開いた。


「えっと、カシス系です……」


友達と居酒屋に行った時によく飲むようなメニューが、果たしてこんな素敵なバーにあるのかはわからなかったけど…


男性(カレ)はあたしの答えにまた優しい笑顔で頷いてくれ、店員を呼んで二人分の注文をしてくれた。


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