甘い誓いのくちづけを
グラスから目を離して理人さんを見上げると、あたしを真っ直ぐ見つめていたらしい彼がいつものように柔らかく微笑んでいた。


甘さと、感動と、幸せと、理人さんへの想い。


その全てを伝える言葉を見付けられずにいると、彼があたしの体を包み込むように抱き締めた。


きっとこの世紀の瞬間を見ている人は、数え切れない程たくさんいて。


あの幻想的なリングの下で過ごす恋人達も、決して少なくは無いと思うけど。


それでも、この世紀の瞬間に理人さんと過ごせたあたしは、やっぱり世界中で一番幸せなんじゃないかと思う。


「好きです……」


「俺も好きだよ」


有り触れた言葉で有りっ丈(タケ)の想いを紡いだあたしの唇に、理人さんは甘くて優しいキスを降らせてくれた――…。


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