甘い誓いのくちづけを
どう考えても、あたしの自己満足にしか過ぎない思い。


それなのに…


優しい言葉を掛けてくれた事が、とても嬉しかった。


「……お世辞でも嬉しいです」


「残念ながら、俺はお世辞は言わない性質(タチ)なんだ。それとも、瑠花は俺の言う事が信じられない?」


悪戯っぽく微笑む理人さんに、思わずクスッと笑ってしまう。


「信じます」


きっぱりと言うと、彼がどこか安堵混じりの笑みを零した。


それから少しだけ他愛のない話をした後、理人さんが腕時計に視線を落とした。


「そろそろ出ようか」


「そうですね」


ウェイターに合図をしながら立ち上がった理人さんは、またいつの間にか支払いを済ませてくれていた。


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