甘い誓いのくちづけを
「あたし達、どこかで会った事がありますか?」


「ないと思うよ」


即答された事によって、疑問だらけの頭の中が混乱してしまいそうになる。


「じゃあ、どうしてあたしの名前……」


「ごめん」


「え……?」


理人さんの言葉と続けて零された謝罪に益々疑問が深まったあたしに、彼は申し訳なさを含んだような苦笑を浮かべた。


「さっきの彼が来る前に、君が『笑顔よ、瑠花』って言ってるのが聞こえて来たんだ。俺、隣のテーブルにいたから」


どうやら、自分自身に言い聞かせる為に小さく呟いたつもりだった言葉は、少し離れたテーブルにいた理人さんにもしっかりと聞こえていたみたい。


「そ、そうだったんですね……」


恥ずかしくなって俯くと、彼がクスリと笑った。


< 36 / 600 >

この作品をシェア

pagetop